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韓国映画『バーニング 劇場版』あらすじネタバレ結末考察/ヘミの猫の意味解説/村上春樹の原作と比較

『バーニング 劇場版』

ウォーキング・デッドのグレン(スティーヴン・ユァン)出てるじゃん!と思ってユーネクストで配信されていた『バーニング 劇場版』という映画を鑑賞。

村上春樹の短編小説『納屋を焼く』を原作にした韓国映画なんだけど、人の影を描いた最高の映画だった。

この記事ではあらすじネタバレや評価、感想を書いて行こうと思っています。

 

『バーニング 劇場版』基本情報/登場人物・キャスト

バーニングの登場人物

監督:イ・チャンドン

脚本:イ・チャンドン、オ・ジョンミ

出演:ユ・アイン(ジョンス)、スティーヴン・ユァン(ベン)、チョン・ジョンソ(ヘミ)

公開年:2018年

上映時間:2時間28分

カンヌ国際映画祭に出品され、是枝監督の『万引き家族』と評価を2分した傑作で、パルム・ドールは『万引き家族』に渡ったが、『バーニング 劇場版』は国際批評家連盟賞を獲得している。米国のオバマ元大統領もこの映画のファンらしい。

監督のイ・チャンドンは、2002年の『オアシス』でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞するなど、国際的な評価を受けている人物。

ユ・アインは2018年公開の映画『国家が破産する日』などで有名。

スティーヴン・ユァンはウォーキング・デッドのグレン役の俳優。2020年公開でアカデミー賞にもノミネートされた韓国系移民を描いた映画『ミナリ』にも主演。

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『バーニング 劇場版』あらすじネタバレ結末

『バーニング 劇場版』のあらすじネタバレと感想を交互に書いていく。

あらすじ1:ジョンスとヘミの出会い

映画バーニング/ジョンスとヘミ

主人公イ・ジョンス(ユ・アイン)は兵役を終え大学を卒業し、小説家になろうと定職につかずブラブラしていた。そこへ幼馴染のシン・ヘミが声をかけてくる。ブスだった彼女は整形して綺麗になっていた。ヘミと夜に酒を飲むと彼女はミカンを食べるパントマイムを見せ、「ミカンが無いことを忘れることが大事」と口にした。

ジョンスの父は傷害事件を起こし裁判中。

ジョンスの父の裁判

ジョンスは実家に戻り牛の世話をすることに。家には無言電話が掛かってくる。

ヘミはジョンスを自分のアパート呼び、2人は男女の関係になる。アフリカのケニアに旅行に行くといって、部屋の猫・ボイルの餌をジョンスに頼むが、猫のトイレはあるものの、猫の姿は1ヶ月以上見つけられなかった。

このパートの感想

バーニングのイジョンス

主人公のイ・ジョンスは猫背でいかにも根暗な青年。ヘミはイタイ女の子という強烈な始まりである。しかも猫のボイルが存在するかしないかが“謎”で、いきなりシュールレアリスムな世界に片足を突っ込んでいる。

韓国の田舎の風景が昔ながらという感じでとても美しく、ジョンス役のユ・アインの演技力も半端ではない。感情の起伏はないながらも、モテない男性の鬱屈というものを十二分に表現している。「ミカンが無いことを忘れることが大事」というセリフも哲学的で、素晴らしいと思う。

あらすじ2:金持ちのベン登場

スティーヴン・ユァン バーニング劇場版

ケニアから帰ってきたヘミを空港に迎えに行くと、旅で一緒だったというベン(スティーヴン・ユァン)という男性の姿が。ジョンスはヘミの彼氏ではないかと心配するが、ベンはジョンスに親切に接する。3人でホルモン鍋を食べに行った。

バーニング劇場版のスティーヴン・ユァン

後日電話があり、ジョンスはベンとヘミがいるお洒落な街のお洒落なカフェへ。ベンはヘミの手相を見ていた。その後、ベンが住む高級マンションに招かれ、ジョンスはトイレの棚に女性用の化粧セットがあるのを見て驚く。

ある日、ヘミがベンの高級車に乗ってジョンスの実家にやってきた。3人は庭でワインを飲みながら、ベンが出したマリファナを吸う。

ジョンス、ヘミ、ベン(バーニング劇場版)

ヘミは昔井戸に落ちてジョンスに助けられたと言うが、ジョンスは覚えていない。彼女は、急に上半身裸になって踊り出して寝てしまった。

裸になったヘミ

ジョンスは、母親が出て行ったあと、父親の命令で母の服を燃やしたことがあり、今でもその夢を見ると話す。

ベンはジョンスに、“ビニールハウス”を燃やすという犯罪的な趣味を明かした。そして実は下見に来ていて、近々この近くのビニールハウスを燃やすという。ジョンスはヘミを愛していると話すと、ベンはなぜか笑った。

次の日、ジョンスはベンの車に乗って帰ろうとするヘミに、裸になるのは娼婦と一緒だと言い放った。

このパートの感想

映画バーニングの主人公の家からの景色

根暗なジョンスが、ベンに経済力などの違いを見せつけられて、ヘミが彼の元に行くのではないかと内心心配しながらも、友達になりかけていて困惑するという、微妙な距離感がたまらない。ベンの“ビニールハウスを焼くのが趣味だ”と語る部分は、個人的にメチャクチャ名シーンだと思う。遠くを見ながら語るスティーヴン・ユァンの演技も物憂げで最高だった。

なぜビニールハウスを焼くのかというのは衝動的なもので、この話が本当なのか何もかも謎なんだけど、シュールで美しい世界観に脱帽という感じ。

あらすじ3:ヘミの失踪/ジョンスがベンを尾行

それ以降ヘミとの連絡が取れなくなった。ジョンスは毎朝走って近くのビニールハウスを周り、燃やされていないことを確かめる。

ジョンスはカフェに行き、ベンに話を聞くが、彼もヘミからなんの音沙汰もないということだった。

ベンを演じるスティーヴン・ユァン

そしてベンはビニールハウスを確かに燃やしたという。

その後、ジョンスはベンを尾行するようになり、トレーニングジムや美術館、教会へ行く彼を観察する。ある時は、ベンが一人で山の上のダムに行った時も、バレないようについていった。ベンもジョンスの尾行に気づいていた。

ジョンスが実家で寝ていると、母親から電話があり、16年ぶりに会いたいという。ジョンスは母と会うが、彼女は借金の話しかせず、終始スマホをいじっていた。母親は、昔ヘミの家の近くに確かに井戸はあったという。

このパートの感想

ジョンス(映画バーニング)

一気にジョンスの挙動が怪しくなった。ただ根暗な青年かと思っていたら、明らかに“犯罪者予備軍”的な行動が目立ってきたのだ。それと同時にこの映画は、犯罪者側の視点で描かれているとわかり、それ自体がある種のサスペンスのカタルシスをもたらしてくれた。

バーニングラストネタバレ:ジョンスとベンの最期

マンションの下で張り込みをしていたジョンスは、ベンに見つかって部屋に招かれる。

バーニング ベンとジョンス

部屋には前にいなかった猫がいた。ベンは捨て猫を拾ったと言う。トイレの棚にはジョンスがヘミにあげた時計があった。

ベンの彼女が来てドアを開けた際、猫は外へ逃げ出し、3人は駐車場を探す。ジョンスは駐車場で猫を見つけ、「ボイラ」とヘミの猫の名前を呼ぶとそばに寄って来た。ベンの部屋には彼の友達たちが次々にやって来る。ジョンスは途中で帰った。

ジョンスはビニールハウスが建ち並ぶ実家付近に、ベンを呼び出した。ジョンスは車から降りたベンを何度もナイフで刺して殺し、車の中に押し込んだ。血がついた服を全て脱いで全裸になり、車内にガゾリンを巻いてジッポで火をつける。

ジョンスは燃える車を直視せず、軽トラックで去って行った。

ラスト結末の感想

バーニングの主人公ジョンス

ラストの結末パートで『バーニング 劇場版』は、まさに“燃えた”。ジョンスの狂気が頂点に達したのだ。そして、明確な答えは何も出ないまま終幕を迎える。謎が謎のままで終わる浮遊感がたまらない。

『バーニング 劇場版』謎や意味を考察・解説/最高のシュールレアリスム

バーニング劇場版

『バーニング 劇場版』には多くの謎が残る。大きな謎を箇条書きにしてみよう。

  1. 猫のボイルは存在するのか
  2. ヘミは存在するのか
  3. ベンは存在するのか

こうやって書き出して見るとわかるが、登場人物の存在自体が謎になっているので、正しい答えなどない。ジョンスが精神を病んでいると考えられるので、この映画に現実と虚構の境界線は一切ないのである。

バーニングのジョンス

『バーニング 劇場版』は、むしろジョンスの深い潜在心理にスポットを当てた映画で、登場人物や風景は、彼の潜在意識を投影したものだと考えた方がよいだろう。

サラバドール・ダリや、ジョルジョ・デ・キリコの絵画は、人間の潜在意識にスポットを当てたシュールレアリスムというジャンルで括られることがある。映画『マルホランド・ドライブ』やドラマ『ツイン・ピークス』で有名なデヴィッド・リンチ監督の作風もシュールレアリスムに入る。

『バーニング 劇場版』もこのジャンルに入るだろう。最高のシュールレアリスム映画である。

村上春樹の原作短編『納屋を焼く』と比較

映画『バーニング』のもとになった村上春樹の短編小説『納屋を焼く』を読んでみた。

抽象的で独創的なメタファーが多くて素晴らしい小説だった。

小説では登場人物に名前はなく、既婚者で小説家である主人公に彼女ができて、その彼女にまたボーイフレンドができた後で、失踪するという内容。大筋はバーニングと一緒。

映画との主な違いは、主人公が既婚でそれほど変人に描かれていないところ。そしてラストも殺人などはなく、失踪しただけで終わる。

パントマイムの「みかんがあることを忘れればいい」や、主人公の家でのマリファナパーティーの描写、「納屋を焼くんですよ」発言は原作にも登場する。

そして村上春樹らしく、結局すべて謎のまま終わり、明確な答えはない。

ただ、原作を読むと、主人公にとっての納屋=彼女の関係があると思う。

そして主人公の心理状態としては、女を取られたことによる男性への嫉妬があった。

具体的に何があったか推測するとすれば、

  • 男による嫉妬で抑圧された精神が、心の中の彼女の存在を消した
  • 彼女はその男に殺された
  • 主人公が彼女を殺して、失踪したと自らの記憶を書き換えた

これらが考えられる。

イ・チャンドン監督は、『バーニング』をジョンスが自分よりスペックの高いベンを殺す結末にし、納屋=彼女を喪失した恨みを晴らしたと表現したのだろう。

映画『バーニングの劇場版』結論まとめ

マリファナを吸うベン(スティーヴン・ユァン)

『バーニング 劇場版』僕なりの見解を述べてみる。

ストーリーとしては、ジョンスがヘミを殺した!のだと思う。

それが彼にとっての“納屋を焼く”ではないか。

ヘミを殺した原因はベンへの嫉妬なので、原因となったベンも殺した。

ジョンスは現実と妄想の間で生きつつ、犯行に及んでしまったのだ。

いろんな解釈があると思うが、これほどの狂気を孕んでいる傑作はそうはない。

バーニング劇場版が好きな人にオススメの韓流映画記事

ベン役を務めたスティーヴン・ユァンが出演しているものでおすすめなのが、Netflixオリジナルの『オクジャ』。解説・考察記事をぜひ読んでほしい。

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『バーニング劇場版』のような、心にじわじわくるサスペンスが好きな人におすすめの映画が韓国の鬼才ポン・ジュノ監督の『母なる証明』だ。この映画の解説記事も読んで欲しい。

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