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Netflix映画『Mankマンク』あらすじネタバレ解説・考察!市民ケーンの新解釈か?感想:評価

Netflixオリジナル映画『Mank マンク』

Netflixオリジナル映画『Mank マンク』は、2021年度アカデミー賞で最多ノミネートをされた。デヴィッド・フィンチャーとゲイリー・オールドマンがタッグを組み、クオリティと革新性を兼ね備えた素晴らしい作品に仕上がった。

ユーモアにあふれるセリフ回しなど、見どころは多い傑作。ただし『市民ケーン』を見ていないと意味がわからず楽しくないだろう。

 

映画『Mankマンク』の概要(ネタバレなし)

オーソン・ウェルズが監督した歴史的傑作映画『市民ケーン』の脚本家マンクにスポットを当てたフィクション。2021年のアカデミー賞最多ノミネート作で、『ミナリ』や『シカゴ7裁判』とともに注目されている。

『市民ケーン』のストーリーにどんな背景があったのかが社会風刺たっぷりに描かれている(本作を見る前に『市民ケーン』を絶対に見た方がいい)。

監督は『セブン』『ゲーム』『ファイトクラブ』『ゴーン・ガール』などで知られる鬼才デヴィッド・フィンチャー。

脚本はなんとフィンチャーの父でジャーナリストのジャック・フィンチャーが生前に書き上げたもの(2003年頃)。

主演は、『レオン』『フィフス・エレメント』『ダークナイト・ライジング』などで名俳優として知られるゲイリー・オールドマン。

映画『Mankマンク』あらすじネタバレ解説

☞クリックであらすじネタバレ表示

ハーマン・J・マンキーウィッツ(マンク)ゲイリー・オールドマン

脚本家のハーマン・J・マンキーウィッツ(通称マンク/ゲイリー・オールドマン)は、ラジオ演劇界からハリウッドにやってきた24歳の天才オーソン・ウェルズ(トム・バーク)から映画の脚本を依頼される。

マンクは車の事故で足を骨折しており、助手となったリタ(リリー・コリンズ)が彼が喋ったことをタイプしていった。

リタは夫の空母が行方不明という報告を聞いて落ち込む。

60日間で締め切りだが、あと2週間しかないにも関わらず原稿は進まない。

マンクの過去の回想/1934年前後

マンクの過去の回想シーン1934年の知事選挙

天才との呼び名も高く、社交的だったマンクは、ある日女優・マリオン(アマンダ・サイフレッド)の撮影現場で、彼女の愛人で新聞王のウィリアム・ハースト(チャールズ・ダンス)と知り合い親交を深める。

自身が所属する映画会社MGMは、マンクの友人・シェリー監督を使ってカリフォルニア州知事選挙で、共和党のフランク・メリアムを担ぐ捏造のドキュメンタリー映画を撮影。

民衆がその映画を見た結果、貧富の差を訴えた民主党のシンクレアは落選。シェリーは民衆を扇動してしまったことを悔やんで自殺してしまう。

マンクは裏で手を引いていたハーストのパーティーで彼を非難する演説を始め、ゲロを吐く。しかしそこでハーストがマンクの脚本家としての給料を半分払ってることを聞かされて愕然とした。

現在1939年頃

マンクは酒の力やリタのサポートもあり、たった13日で200ページを仕上げ、初稿を完成させた。弟のジョージは新聞王ハーストを敵に回すことの危機をうったえつつ、兄貴の生涯で最高の作品だと言った。

オーソン・ウェルズは原稿を気に入るが、マンクが「やっぱり脚本家にクレジットしてほしい」と言ったため激怒する。

リタの夫が生きていたと電報が入った。

映画『市民ケーン』はハースト圧力もあり興行的にはイマイチだったが、ストーリーや画期的な映像手法が話題となり、アカデミー賞6部門にノミネート。

結果、マンクは脚本賞を受賞することになる。

映画『Mank マンク』完

 

『Mankマンク』ネタバレ感想・評価まとめ/かなり社会派

主人公マンクを演じたゲイリー・オールドマン

ゲイリー・オールドマン演じるマンクが、ユーモアと知性あふれる言葉で社会風刺をしまくる。その裏に、マンク自身の葛藤と苦悩が確かに垣間見える。

マンクのセリフが常にウィットに富んでいて、特に会話シーンが見応えがある。後述するがデヴィッド・フィンチャーの映像のこだわりも半端なく、映画ファンが歓喜する仕上がりだった。

ただ、『市民ケーン』を見てないとストーリーの意味がわからないし、政治や選挙に興味がない人は置いていかれるだろう。

フェリーニの『8 1/2』やそれをもとにした『NINE』のような映画人がスランプに陥る話かと思ったけど違って、権力と選挙の癒着などに対抗する社会派の側面が強い。

ストーリーのスパイスになっていたのが、助手リタの存在。彼女の夫が生きていたとわかるラストシーンは、一筋の光のようで感動できた。

Mankのセリフはもはや金言!

ハーストのパーティーでの演説シーン

『Mank』は主人公マンクのセリフを中心に、ウィットに富んだ金言にあふれていたので、個人的に印象に残ったものを紹介する。

マンク「キングコングは巨大。メアリー・ピックフォードは40歳の処女」

マンクが、大衆が映画をどのように捉えるか語ったセリフ。ミニチュアを使って撮影したキングコングは巨大だと思い込んでおり、サイレント映画の大スターメアリー・ピックフォードは処女だと信じている人がいるということ。切れ味がよすぎる皮肉。

結果的にこのセリフが、捏造選挙ドキュメントを作らされた友人監督シェリーを追い詰めたと考えると、感慨深い。

『Mankマンク』考察!フィンチャー流“市民ケーン”

市民ケーンのオマージュシーン

『Mank マンク』を見た人は誰もが感じるだろう。「デヴィッド・フィンチャーの市民ケーンオマージュがすごすぎる」。

まず本作は白黒で、現在と回想を行ったりきたりする構成自体が『市民ケーン』を模したものだ。

パンフォーカスや、ライティングはもちろん、フィルムの黒い点や画面ノイズ、継ぎ目が不自然な感じまで、わざわざ当時を再現している。

セリフのトーンも昔っぽいし、その上モノラル録音にして古さを感じるリバーブ感が出ている。

なぜここまでやる必要があったのか?狂気としか言いようがない。

昔の名作が好きな人や年配の方は嬉しいかもしれないが、そうじゃない人には全く響かない努力だろう。

フィンチャーが当時のクラシック映画のファンだということもあるだろう。彼は市民ケーンの続編のような意気込みで作ったのかもしれない。

そしてそれ以上に、時代の空気感を再現したかったのだろう。

現代で書き上げたストーリーを当時の空気感で再現したらどうなるのか?

『Mank マンク』はその疑問に答えを与えてくれた。

登場人物・キャストや演技について

映画マンクのキャスト ゲイリー・オールドマンとアマンダ・サイフレッド

ゲイリー・オールドマンが演じたマンクは、自分の才能の自覚、権力への憎しみ、正義感に揺れる、まさに“脚本家”という感じで、やっぱりすごかった。上流階級の皮肉やというキャラクターの好みは分かれるかもしれないが。

2021年第93回アカデミー主演男優にノミネートされていて、『マ・レイニーのブラックボトム』のチャドウィック・ボーズマンと争うことになるだろうと思ったら、『ファーザー』のアンソニー・ホプキンスが受賞した。

アマンダ・サイフリッド(ネトフリ映画『闇はささやく』などに出演)もバカっぽい女優を好演した。アマンダはアカデミー助演女優賞にノミネートされたが受賞を逃した。

ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のタイウィン役だったチャールズ・ダンスが演じた新聞王ウィリアム・ハーストも、凍りついているような表情が印象的でよかった。

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