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Smells Like Maniac 第4話 暗殺者からの依頼

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Smells Like Maniac 第4話 暗殺者からの依頼

〜ロバート編〜

ロバートは翌日昼前に起き、レストランで軽い昼食を食べていた。オーナーのカルロが血相を変えてやって来る。従業員のマーシーが2階のシアタールームにいたジェームズの死体を発見し、次いで407号室でソフィアの死体も見つかったと、そこにいる全員の前で話す。そして何かが書かれた紙をテーブルの中央に突き出す。マーシーがジェームズの死体の前で見つけたようだ。

 

「16日の午後15時まで外部に殺人の件を漏らすな。それまでに全員で話し合いソフィアとジェームズ殺した人物が外に逃げた可能性を示唆するため、口裏を合わせろ。指定事項前に警察に通報した場合、メールなどで事件を拡散した場合、もしくは16日に警察への供述を失敗した場合は、各々が家に帰って日常生活に戻った後、時間を見つけて全員殺しに行く」文面にはこう書かれていた。

 

「誰が何のためにこんなことをしたのかわからないが、犯人は外部の犯行だと思わせたいらしい。俺がソフィアとジェームズの死体を見る限り、完全にプロのクリーナー(暗殺者)の犯行だろう。もちろん即刻警察に知らせるべきなのは分かっているが、待って欲しい」カルロが息を荒げて言った。

 

「犯人の主張が本当だという確証はないのだろう」50歳手前くらいのイドリスという男性が言う。

「嘘だという確証もない。もし裏社会の組織が絡んでいれば、言われた通り証言を偽らなければ、本当に報復があるかもしれない。とにかくだ、宿泊客は今6人、俺と娘と夜もいた3名の従業員を入れても、ホテルには全員で11人しかいないんだ」

 

誰かの唾を飲み込む音が聞こえる。外部犯に仕立てろということは、この中に犯人がいる可能性が極めて高いことを意味しているからだ。

 

カルロは続けてソフィアとジェームズの死亡状況を説明した。確認したい者はこの後、一緒について来てくれということだった。食堂ではスプーンの音すら聞こえなくなっていた。

 

「まず、この場で警察に通報するか、明後日の夕方まで待つか話し合おう。全員の意思をひとまず統一しておかなくては」クリスが言った。

 

「警察がもし犯人を特定できなければ、ホテルから帰ったあと、毎日怯えて暮らすことになるわけね」ケイトが続ける。

 

それから小一時間ほど全員で意見を言い合う。異様な光景だ、とロバートは思った。凄惨な殺人が起こったあとで、被害者でも加害者でもない奴らが、こんな風に議論している。この中にソフィアとジェームズを殺した人物がいることも知りながら。それにしても一体誰が殺したのだろうか。ロバートの頭にふと、離れて暮らす娘のハンナの顔が浮かんでいた。

 

〜クリス編〜

 

結論は1時間も経たないうちに出た。イドリス以外の全員が、序盤から紙に書いてある“リミット”まで待つという意見で一致し、結局イドリスもカルロやロバートに言いくるめられて折れた。それからクリス、ロバート、ユーシュエンは、カルロに続いて、死体を確認するために食堂を出た。2階のシアタールームに入ると、凍えるように寒い。死体の腐敗を防ぐため、バーテンに手袋を嵌めさせ、普段は締め切っている防音・防寒の窓を全部開けたのだという。ジェームズは濃い赤色でべっとりコーティングされたウイスキーグラスを左手に持ちながら絶命していた。シャツの胸のあたりが裂け血が固まっている。複数の銃槍だ。口元が少し緩んでいて、不思議と苦しんだ表情には見えない。最後の痛みをバーボンで紛らわすことができたのか、とクリスは思った。

 

407号室に入った。バルコニーの窓右半面が開け放たれていて、真っ白い雪がソフィアの体を覆うように薄く積もっている。よどんだブルーの瞳は宙を見つめ、肘を床につき両手が開かれていた。クリスは、オフィーリアの絵を思い出した。長い時間見入ってしまったような気がしたが、時計の針は2分も進んでいない。横でやかましく話すロバートたちを意に介さず、クリスは心の奥底が熱くなってくるのを感じていた。

 

〜ヴァン編〜

 

なぜあんな書き置きが。警察に通報するかリミットまで待つかの話し合いのあとで、ヴァンは冷静に考えた。昨夜カメラを置いた人物が、カメラを取りにシアタールームに行くと無くなっていることに焦り、自身を特定されにくくするためにあんな文章を書いて置いたのだろう。話し合いの中で誰が暗殺者かを特定し、被害を受けないように距離を置くため。黙っているよりは全員で話し合いをさせ、お互いを監視させた方がよいと考えたのだ。しかし逆にいえば、話し合いでの皆の発言から、こちらからも依頼者に通じる人物が誰なのか見つけやすい。

 

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