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ネタバレ評価!映画『キネマの神様』感想レビュー!キャスト相関図あらすじ結末解説:ロマン+ほろ苦いリアル

映画『キネマの神様』は映画制作に青春を捧げた主人公の過去と現在のコントラストに感動する良作でした!

青春ロマンス的な一方で、人生に対してのリアルな問題提起もなされています。

ネタバレあらすじ解説やぶっちゃけ感想・評価に加え、映画の内容について深く考察してみました。

※これから視聴する人は、見どころ以降はネタバレありなので気をつけてください。

『キネマの神様』キャスト相関図・作品情報

『キネマの神様』キャスト相関図

(記事の画像元:映画『キネマの神様』公式サイト|2021年8月6日(金)公開)

キャストが超豪華ですし、個人的にテンションが上がる顔ぶれでした。

主演の菅田将暉は映画『キャラクター』の熱演が記憶に新しいです。

永野芽郁は『地獄の花園』(2021)で主演を務めて話題になりました。

寺島しのぶは最近だと『アーク/Arc』の演技が素晴らしかったです。今作でも演技力はピカイチでした。

リリー・フランキーは『全裸監督2』でも今作で演じた出水監督のように捻くれたキャラを演じていましたね。

全体的にキャストはバッチリすぎるほどバッチリだったと思います。

見どころ

youtu.be『男はつらいよ』や『釣りバカ日誌』シリーズなど、山田洋次監督のファンなら絶対に楽しめる、完成度が高くて感動的なヒューマンドラマです。

主演の菅田将暉や沢田研二はもちろん、食堂の娘役の永野芽郁や巨匠監督役のリリー・フランキー、昭和大女優役を演じた北川景子までキャストも非常に豪華。

それぞれ演技のタイプが全然違いますが、どのキャラクターも見応え抜群です。

ただ、妙にリアリティがあり過ぎる展開もあり、その点については評価が分かれるかもしれません。

ちなみに主題歌は主演の菅田将暉と、青年期のテラシンを演じた野田洋次郎のバンド・RADWIMPSとのコラボです。

『キネマの神様』評価・感想レビュー

山田洋次監督映画『キネマの神様』

映画『キネマの神様』の評価は86点。

登場人物の現在と過去の対比が素晴らしい上質なヒューマンドラマでした。

原作が作家・原田マハが父親との関係についての実体験を基にした私小説寄りのものらしく、それもあってリアリティのある設定が多いのも印象的。

例えばゴウがなぜ映画監督として成功できなかったかというと、初めての監督業のプレッシャーと強いこだわりのバランスが取れなくなってしまったからです。

現実社会でも、どんな分野でもゴウのように才能がありながら力を発揮できずに辞めてしまう人は山ほどいます。

また、脚本などアイデアに優れているのとそれを形にするのはまた別の能力で、ゴウはその壁にぶち当たって砕けたといえるでしょう。

園子が「脚本にこんなに書き込みしてすごいけど、現場は想定通り行かないことも多いから上手くできるか心配」というような事を言ってたのもリアリティがありました。

何かドラマティックな理由があったわけではなく、青年ゴウは多くの人と同じような理由で挫折したわけです

『キネマの神様』はその辺が非常にリアルですね。

かと思えばゴウが映画業界から去ってから何の職業に就いていたか全く語られていないなど、その点などはリアリティをあえて排除しているようで山田洋次監督による徹底したチューニングがなされていると思いました。

ノスタルジックかつロマンティックな雰囲気の中で人生について現実が突きつけられており、みんな幸せでよかったという単純な結論にならないのも『キネマの神様』の良さでしょう。

 

淑子は幸せだったのか?

永野芽郁演じる淑子『キネマの神様』

淑子はゴウを選んで本当に幸せだったのでしょうか?

結論は幸せだったということでいいかと思いますが、いくつか引っかかる点があります。

まず、歳を取った淑子がゴウの言いなりみたいに描かれていました。

逆らわない・逆らえない妻は昭和世代では多いのかもしれませんが、現代の視点で見ると「本人は幸せなのか?」と疑問に思ってしまいます。

あと、園子が映画から出てきてゴウに話しかけるシーンで「あなたが幸せだったらきっと淑子ちゃんも幸せだったでしょう」とまとめています。

これも正論ではありますが、淑子の意見を度外視しているようでちょっと引っかかりました。

さらに、娘・歩の話からゴウが浮気をして出て行ったことがある衝撃の事実も明らかに。

酸いも甘いも知り尽くした人生経験豊富な人は浮気設定を受け入れられるかもですが、運命の恋を期待していた人や若い世代には「えっ?」となってしまうかもしれませんね。

映画『キネマの神様』はゴウと淑子の運命の恋というより、長年寄り添ったどこにでもいる夫婦のリアルにスポットを当てているようです。

いや、運命の恋と人生のリアルを両方同時に表現したちょっと複雑な作品と言った方が近いでしょう。

2人の人生に賞賛を送りたくなる一方、若い頃はあんなにハツラツとしていた淑子が引っ込み思案な性格になり、ずっと苦労していたというしんみり感も同時に味わえる不思議な作品です。

園子のゴウに対する気持ちは?

ドライブする園子、ゴウ、淑子、テラシン

園子とゴウの関係もやや複雑です。

表面通り受け取ってしまえば、園子は年下で頑張り屋のゴウに弟のような感情を抱いていたとなります。

しかしドライブに誘ったゴウが淑子やテラシンを連れてきたことに、園子が不満を漏らすようなセリフがあったので、恋愛感情も少しあるのでしょう。

ゴウにしても、老人になった彼がテラシンに、「映画で園子の瞳に俺が映っている」というシーンや、最後に園子がゴウの前に現れるシーンから、ゴウが園子に対して憧れを抱いていたこともわかります。

また、ゴウ自ら書いたキネマの神様の脚本は、現実に疲れた主婦がスクリーンの中の俳優とデートする話です(ちなみにこのストーリーはウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』が基になっている)。

その脚本をゴウの人生と対比させると、やはり園子が出てくるラストシーンは園子がゴウにとって特別な存在だったとなるでしょう。

そう捉えると園子が淑子と並んでしまい、ゴウと淑子が運命で結ばれた感が薄れますね。

リアルに考えると、ゴウが園子に憧れや好意を持つのは当然ですし、淑子と同時に好きになってしまうこともあるでしょう。

その辺まで含めて複雑で味わい深いと感じるか、運命の恋じゃなくて残念と感じるか、評価が分かれそうです。

個人的な推測になりますが、若い頃のゴウがあのまま『キネマの神様』を監督として作り上げていたら、園子と結ばれていたのではないでしょうか。

2つの道が浮かび上がってくる作品ですね。

食堂「ふな喜」のモデル

食堂「ふな喜」のモデルは松竹の撮影所近辺に昔あった松尾食堂という山田洋次監督が通った実在の食堂のようです。

食堂ではリリー・フランキー演じる出水監督やゴウ、女優の園子の輪に看板娘の淑子も入って、みんなで青春していたのが印象的でした。

山田洋次監督の当時のノスタルジックな想いが込められているのでしょう。

また、ゴウが映画を見ながら死んでその後の場面が50年前の撮影所に切り替わりましたが、もう1度生まれ変わることがあってもまた映画を作りたい!という熱い想いが伝わってきますね。

主人公・ゴウは天国か次の世界で、また映画を作っているのかもしれません。

沢田研二・志村けん/どっちが良かった?

映画『キネマの神様』はもともと志村けん主演の予定でしたが、惜しくもコロナで亡くなってしまったので代役で沢田研二になりました。

沢田研二の飄々としたゴウもよかったですが、志村けんバージョンならどうなっていたかと想像が膨らみます。

どうしようもない父親役を演じさせたら上手そうですよね。

ストーリー的には志村けんがゴウ役を演じればダメっぷりが際立ってより整合性がある作品になっていた気もします。

どっちが良かったかは比べられませんが、志村けんさんも天国でこの映画を楽しんでいるといいですね。

映画『キネマの神様』ネタバレあらすじ解説

※本編では主人公・ゴウの現在と過去が交錯して描かれますが、わかりやすくするため区別して描きます。

過去(50年前)

『キネマの神様』ゴウの過去

青年・ゴウ(菅田将暉)は、松竹の映画スタッフとして巨匠・出水宏監督(リリー・フランキー)の助監督を務めるなど映画制作に熱中していました。

試写担当のテラシン(野田洋次郎)とは親友で、いつか映画監督になる夢について語り合っていますが…。

☞クリックでネタバレあらすじ表示

ゴウは、打ち上げなどでよく使う食堂「ふな喜」の娘・淑子(永野芽郁)をテラシンに紹介します。テラシンは淑子に一目惚れしました。

出水監督作品に出演しているスター女優の桂園子(北川景子)も、ふな喜ではゴウや淑子といつも楽しく喋っています。

ある日園子がゴウをドライブに誘うと、ゴウは淑子とテラシンも連れてきました。

園子は道中でゴウに「気になる人がいるんでしょ?」と話します。テラシンは道中で嬉しそうに淑子の写真を撮りました。

ゴウは淑子を好きでしたが、自分と一緒にいると幸せになれないと考え、テラシンに「手紙を書いてみなよ」と言います。

テラシンはラブレターを書きます。

しかし淑子はゴウに好意を伝え、2人は雨の中抱きしめあいました。

そんな中、ゴウは自分が考えた脚本「キネマの神様」の監督としてデビューするチャンスを掴みます。

内容は、映画好きの主婦の前にスクリーンの中の俳優が出てくるというもの。

主演は園子になりついに撮影当日になりますが、ゴウは緊張のあまり下痢が止まりません。

撮影はスタートしますが撮影監督と折り合いがつかずに口論になり、セットから落ちて腕を骨折してしまいました。

ゴウは自分に映画制作は無理だと考え、故郷の岡山に帰ります。

淑子は出水監督から、「ゴウを追わない方がいい」と言われますが、園子の車で汽車に乗り、岡山へいきました。

現在

沢田研二演じるゴウや、寺島しのぶ

ゴウ(沢田研二)の賭博好きは治っていません。

淑子は、数十年ぶりに偶然再会を果たしたテラシン(小林稔侍)が経営するミニシアター「テアトル銀幕」で掃除のバイトをしています。

娘・歩(寺島しのぶ)は職場にまでサラ金から電話がかかってきたことに憤慨して…。

☞クリックでネタバレあらすじ結末表示

歩はゴウの言うことはなんでも聞いてしまう母・淑子(宮本信子)にも怒り、一緒に依存症セミナーに参加しました。

講義の先生(原田泰造)は「ギャンブル依存は病気で、家族が肩代わりしていたらいつまでも治らない」とアドバイスします。

歩はゴウのカードや通帳を無理矢理預かると、ゴウは家出してテアトル銀幕に寝泊まりするようになりました。

しばらくしてゴウは孫の勇太(歩の息子)の部屋にやってきます。

勇太は50年前にゴウが書いたキネマの神様の脚本を見て感動したと言いました。

勇太とゴウは共同作業で脚本を原題風に修正し始めます。

城戸賞に応募し見事最優秀賞を受賞しました。

ゴウは優勝賞金100万円がもらえると聞いて大喜びします。

ゴウの受賞を喜ぶテラシン

テラシンがお祝いパーティーを開いて、仲間内で集まって楽しく過ごしました。

しかし肝臓が悪かったゴウは体調を崩して入院してしまいます。

ゴウは「淑子は俺じゃなくてテラシンを選んでいた方がよかったかもしれない」とテラシンに語りました。

城戸賞の授賞式には娘の歩が出席し、ゴウへの思いを吐露しました。

後日、ゴウは淑子や歩、勇太に連れられてテアトル銀幕に園子が主演の映画を見にきます。

スクリーンの中から園子が現れました。

園子はゴウの隣に座り「あなたが幸せだったらきっと淑子も幸せだった」と話します。

ゴウは映画を見ながら息絶えました。

50年前に映画制作に打ち込んでいた若いゴウが仲間達と楽しそうに仕事をしている場面になります。

映画『キネマの神様』終わり!

最後まとめ

『キネマの神様』は、映画制作に明け暮れた過去とダメダメな現在を対比した感動あふれるヒューマンドラマである一方、リアルな現実を突きつけてくる複雑で味わい深い作品でした。

もしかすると好みは分かれるかもしれませんが、山田洋次監督にはいつまでも彼なりの価値観で映画を作り続けて欲しいと感じました。

山田洋次監督はもう89歳、今もまだ第一線とは超人すぎです。

『キネマの神様』感想・考察レビュー終わり!

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