映画『ダウン・バイ・ロー』(原題:Down by low)は、アメリカインディーズ映画の巨匠と呼ばれるジム・ジャームッシュ監督作品。
モノクロでゆるゆるな、オフビート・ロードムービーだ。
あらすじをネタバレありで解説したあとに、意味不明な印象も受ける本作の魅力について存分に語っていく。
- ダウン・バイ・ローの言葉の意味
- 映画『ダウン・バイ・ロー/down by law』あらすじネタバレ解説
- ダウン・バイ・ローネタバレ考察/映画でありアート作品
- ダウン・バイ・ロー解説/社会へのアンチテーゼ
- 映画『ダウン・バイ・ロー/down by law』感想まとめ
ダウン・バイ・ローの言葉の意味
『ダウン・バイ・ロー』(Down by Law)はスラングで、親しい兄弟という意味。もっと詳しくいうと、命を懸けて相手を守るくらいの間柄ということ。刑務所などで使われはじめたようだ。
ザック、ジャック、ロベルトが、短いながらもお互いを支え合ったストーリーにピッタリのタイトル。
映画『ダウン・バイ・ロー/down by law』あらすじネタバレ解説
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あらすじ1:ザックとジャックの失敗
うだつの上がらないラジオD.J.のザック(トム・ウェイツ)は、ヒステリックな恋人に見放され家を追い出された。ザックが酒を飲んで酔いつぶれていると、知り合いの裏稼業の男から車を運ぶ仕事を依頼される。
ザックはその車を運転していたが、警察に止められた。トランクを開けると見知らぬ男性の死体が。ザックは嵌められたのだ。
一方、ポン引き(売春婦斡旋の仕事)のジャックには商売を広げるという野心があった。ジャックは、知り合いから美人の新人娼婦の話を聞き、雇うために彼女の部屋へ行く。すると警察が乱入。ベットには少女が寝ていた。ジャックは彼を妬む人物に嵌められたのだ。
ザックとジャックは同じ監房に収監される。お互いウマが合わず喧嘩をすることもあったが、ザックがD.J.だということや、無実の罪だということで支え合った。
あらすじ2:ロベルト登場
ザックとジャックの監房に、ロベルトというイタリア人が収監されてきた。
ロベルトはメモを見ながら、たどたどしい英語でずっと喋り続ける。ロベルトはトランプでイカサマをして、逃げるときにビリヤードの玉を相手に当てて死なせてしまったという。
次第に2人はロベルトと打ち解け、バカ話で盛り上がる仲になった。
そんなある日、ロベルトが刑務所を脱獄するルートを見つけたと話す。
ザック、ジャック、ロベルトはそのルートであっさりと脱獄に成功。猟犬に追われて湿地帯を逃げ続けた。
あらすじ3:ザックとジャックの喧嘩
ザックは、泳げないロベルトを川に引きずりこみ向こう岸へ。3人は猟犬と追っ手を巻くことに成功した。しかし食料はなく、辺りはワニがいるかもしれない湿地帯。
そんな中、川辺に小さな小屋を見つける。ザック、ジャック、ロベルトは中に入ると、偶然にも2段ベッドが2つあり、刑務所の監房と似た作りだった。
翌朝、3人は木のボートで川を下る。しかしボートは破損して沈んだ。途方にくれたザックとジャックは大ゲンカ。
ウサギを狩ったロベルトを横目に喧嘩をし、二手に別れてしまう。
ロベルトがウサギを焼いていると、結局2人は腹を空かせて戻ってきた。
あらすじ4:旅の結末
しばらく歩き、3人は小さな家を見つけた。ロベルトが偵察に中に入るが戻ってこない。ザックとジャックが中に入ると、ロベルトはそこに住んでいるイタリア人女性ニコレッタと気が合い、彼女の恋人になってこの家に住むと言う。
3人はニコレッタが用意した豪華な夕食を楽しんだ。
朝、ロベルトとニコレッタは音楽をかけてダンスをしている。
ザックとジャックは2人に別れを告げ、道路を歩く。別れ道になり、ザックとジャックは別々の方向へ進んだ。
ダウン・バイ・ロー 完
ダウン・バイ・ローネタバレ考察/映画でありアート作品
ダウン・バイ・ローは、ストーリー自体が大きな意味を持った映画ではない。受け身で観てしまうと、あまりのゆるさに肩透かしを食らったと思うだろう。
結論を先に述べると、本作はシーンの意味は観ている人が自分で考えろ!という映画なのだ。アート作品に近い映画といえばわかりやすいだろう。
笑うところも、感動するところも人それぞれ。好きな場面は自分で見つけよう!そんなメッセージが込められている気がする。
映画パラサイト半地下の家族を観て、話の意図がわからない!という人は少ないだろう。しかし、ダウン・バイ・ローは受け取る側が自分で判断しなければ、オチのない意味不明な映画になってしまう。
ダウン・バイ・ロー解説/社会へのアンチテーゼ
ダウン・バイ・ローの登場人物、ザック、ジャック、ロベルトの共通点は何だろう。それは将来のことを深く考えないことだ。
深く考えずに仲間に騙されて捕まり、先のことなんか完全に行き当たりばったり。映画を見た人ならわかるだろう。
ロベルトに至っては、脱獄したばかりでとどまれば捕まる可能性が高いにもかかわらず、ニコレッタと一緒になるという、ノープランっぷり。
しかし人が生きるとは、本来ノープランでよいのではないだろうか?
資本主義の競争社会になり、将来のプランを立てて生きるのが当たり前の世の中だが、その生き方は本当に正しいのか?
ダウン・バイ・ローは、そんな痛切なアンチテーゼを投げかけている。
深く考えていなくても、人と人が友達になって助け合う過程は、ただ尊くて美しいのだ。
ジム・ジャームッシュ監督は、ダウン・バイ・ローでそんな瞬間を切り取りたかったのだろう。
映画『ダウン・バイ・ロー/down by law』感想まとめ
ジム・ジャームッシュの才能と、レジェンド歌手であり俳優のトム・ウェイツとの化学反応が随所に垣間見えた映画がダウン・バイ・ローなのだ。
のちに『ライフ・イズ・ビューティフル』の監督、脚本、主演を務めたロベルト役のロベルト・ベニーニの演技もスパイスが効いていて面白い。
稼ぐための商業映画と対極にあるようなダウン・バイ・ローを観て、自分なりに何かを感じることができたなら、何気ないシーンが持つパワーに気づけた証拠かもしれない。
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記事の画像引用元:down-by-law IMDb