Netflixドラマ『HALSTON/ホルストン』は、ユアン・マクレガー主演で実在するファッションデザイナーの栄光と没落を描いています。
きらびやかなアメリカのファッション界を映像で堪能できる一方、デザイナー・ホルストンの破天荒な人生も楽しめます。
本記事では、かなりぶっちゃけた感想レビューと、ストーリーのあらすじを全話ネタバレありで解説しています。
映像は豪華でファッションに惹かれるけど、ストーリーにはもっとパンチが欲しかった佳作(史実に基づいているので盛り上げは難しいかもだけど)。めっちゃ面白いかと言われると正直微妙です…。
- ドラマ『HALSTON/ホルストン』全話ネタバレ感想・酷評レビュー
- スタッフとキャスト
- 1話「ホルストンの名」ネタバレ
- 2話「ベルサイユ」ネタバレ
- 3話「成功の甘き香り」ネタバレ
- 4話「祭りのあと」ネタバレ
- 最終回5話「批評」ネタバレ
ドラマ『HALSTON/ホルストン』全話ネタバレ感想・酷評レビュー
ドラマ『HALSTON/ホルストン』の個人的な評価は78点。
Netflixオリジナルとして、オールディーズファッションと天才チェス少女の狂気を魅力的に描いたドラマ『クイーンズ・ギャンビット』と同じ路線だと感じました。
つまり、ファッションやアートに少しでも興味のある人が夢中にならずにはいられない“ファッション鑑賞ドラマ”となっているのです。
画面には彩りがあり、ファッション雑誌を見る感覚で楽しめます。
キャラクターも魅力的で、主人公・ホルストンを演じるユアン・マクレガーは、こだわりの強さとクールさを兼ね備えたLGBTQ(ゲイ)デザイナーを完璧に演じきっていると思いました。
声の高さや喋り方までデザイナーっぽいというか、とにかく引き込まれてトップデザイナーが抱える死ぬほどのプレッシャーがリアリティたっぷりに描かれています。
ストーリーに関しては、才能あるLGBTの栄光とドラッグやエイズでの破滅で映画『ボヘミアン・ラプソディー』を想起した人も多いのではないでしょうか。
ただ、全5話を観て『ボヘミアン・ラプソディー』以上の感動はなかったですし、『クイーンズ・ギャンビット』のようなラストのカタルシスも得られませんでした。
ドラマとして斬新な感じもしなかったです。
実話を基にしたこともあり、最終話では舞台のデザインが誉められて隠居して終わるという尻すぼみ感が、エンタメとして捉えたときにちょっと寂しい気がします。
ドラマ『HALSTON/ホルストン』はデザイナーとして成功・没落を経て死ぬ間際にやっと自己肯定できたというメッセージが根底にあると思います。
ラストにホルストンが海辺の青色を堪能する姿なんかは、「やっと美しさをなんの考えなしに楽しめるようになったんだな」と感動もありましたが、『HALSTON/ホルストン』はそういった“ドラマティックというより普遍的な自己肯定”を提示した作品だといえるでしょう。
命の残り火を圧倒のライブ音楽に昇華させた、つまりアート至上主義だった『ボヘミアン・ラプソディー』と比較すると、序盤から中盤までは似ているものの、ラストの方向性は違うと思いました。
『HALSTON/ホルストン』のストーリーもちろん正解ではあるのですが、欲を言えば斬新かつ強烈なもう一捻りがほしかったです。
ゴージャスなファッションとは対照的に、あくまでホルストン個人の葛藤にスポットを当て、彼が残したファッションの遺産や影響は二の次のような作品でした。
スタッフとキャスト
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『HALSTON/ホルストン』スタッフ・キャスト
監督:ダニエル・ミナハン
主演:ユアン・マクレガー/デザイナー ホルストン役
出演:レベッカ・デイアン/モデル エルサ役
1話「ホルストンの名」ネタバレ
幼い頃からファッションの才覚を見せていたロイ・ホルストン・フローウィック(ユアン・マクレガー)は、1961年にケネディ大統領夫人のジャクリーンの帽子をデザインしたことで一躍有名になりました。
しかし1968年には帽子のブームが終わり、デザイナーを務めていたメーカー、バーグドルフ・グッドマンの売り上げが落ちました。
そんな中、ゲイであるホルストンはエドという黒人男性と恋におちます。ドレスをデザインしてファッションショーを行いますが、彼のセンスが理解されず失敗に終わりました。
ホルストンは、女優のライザ・ミネリと知り合ってインスパイアを受け、独立を決意します。
自分のブランドを立ち上げるためイラストレーターのジョー・ユーラ、モデルのエルサ・ペレッティ、若いデザイナーのジョエル・シューマカーをチームに引き入れ、富豪のエステル・マーシュから10万ドルの融資を受けて独立をスタート。
最初はチームワークが機能せずデザインもうまくいきませんが、ジョエルの染め物風ドレスや、ウルトラスエードを使ったコートが流行ります。
『HALSTON/ホルストン』1話 END!
1話の感想レビュー
ファッションに興味がなくても、さまざまなデザインが織りなす圧倒的な世界観に引き込まれます。ファッションが情熱と羨望の歴史であることがヒシヒシと感じられ、興味が湧いてくるのです。
また男同士のセックスシーンがかなり生々しく描かれていて“アレ”は見えないものの、さすがNetflix。進んでる…という印象。『全裸監督』や、水原希子のヌードとレズシーンがリアルに映された映画『彼女』なんかもそうですが、Netflixは性に対して寛容ですね。
2話「ベルサイユ」ネタバレ
数年後の1973年。ホルストンはコートなどを流行らせさらに有名になっていましたが、経営判断に疎く、会社は借金まみれでした。
ホルストンは黒人の男娼を毎日のように呼び、ドラッグとセックスにまみれた生活を送っていました。ヴィクター・ヒューゴというベネズエラ人アーティストと恋愛関係になります。
ノートン・サイモンの経営者デイヴィッド・マホーニーが商標を売って共同経営しようと持ちかけてきますが、ホルストンは悩みます。
ファッション業界の重鎮エレノアが、フランスパリのベルサイユ宮殿で米仏デザイナーが対決するファッションショーを開催することになり、ホルストンはデイヴィッドの援助もあって半ば強制的にエントリーさせられました。しかし準備期間は3週間しかありません。
パリ現地に入りますが作品数も足りず、不測の事態ばかり起こり、ホルストンはパニックになります。出演する親友のライザが彼を励まし、なんとかショーは大成功に終わりました。
帰りの飛行機の中で、イラストレーターのジョーはホルストンが商標を売ったと知り嘆きます。
『HALSTON/ホルストン』2話 END!
2話の感想レビュー
ホルストンの精神状態がヤバくなってきました。この展開は『クイーンズ・ギャンビット』と似てますね!
3話「成功の甘き香り」ネタバレ
1974年。ホルストンは経営者のデイヴィッドに言われ、マックスファクター(会社)から自信が調合した婦人用香水を販売することになりました。
エルサにデザインさせた球体のボトルをデイヴィッドは却下しましたが、生産でかかるコストの余剰分をホルストンが払うと言って納得させます。
ホルストンは調合師のアデルと綿密な相談を繰り返し、取り入れたい香を持ってきてと言われて、蘭とタバコとヴィクターの下着を持っていき、アデルから天才と言われます。
ホルストンの香水は大ヒットし、会社の売り上げも大幅にアップしました。
この頃からスタジオ54というクラブに入り浸るようになってき、ヴィクターとはお互いに違う男性と関係を持つなど、すれ違いも多くなります。
3話の考察・感想
香水についてちょっと勉強できた回でした。トップノートは現在、ハートノートは全体を表す骨格、ボトムノートは過去と捉えるアデルの考え方が素敵です。
そしてそれを理解して最高の香水を作ったホルストンの天才ぶりが楽しめたエピソードでした。
史実としてこの香水は1977年当時アメリカでめちゃくちゃに売れて、ホルストンは手がける商品を増やしていったようです。
4話「祭りのあと」ネタバレ
ホルストンはモントークに別荘を買い、優雅に生活していました。
そんな折、スタジオ54は脱税で摘発され、換気口に忍び込もうとして挟まった女性(セレブのおっかけ)の死体が発見されます。
その死体がカルバン・クラインを着ていたことで宣伝効果になってしまったとホルストンは怒りをあらわにしました。
ホルストンはコカインを常用するようになり、ティファニーのデザイナーとして活躍していたエルサとは大喧嘩してしまいます。そんな中、ホルストンの母が他界しさらにショックを受けます。
そしてイラストレーターで盟友のジョーも追放してしまいました。
デイヴィッドはジーンズのデザインに乗り気でなく時期を逃したホルストンに業を煮やし、JCペニーという大衆メーカーとのコラボを強要します。
さらにデイヴィッドは株を非公開にしてホルストンの部門を売却しようと考えますが、株価の情報が漏れて失敗。
ホルストン・リミテッドはエスマーク社に買収され、カール・エプスタインという男性に経営を握られてしまいました。
ヴィクターはHIV陽性の診断を下されます。
4話の感想・解説
アーティスト思考とドラッグと浪費で経営が立ち行かなくなる典型的な展開になってきました。
「大衆向け商品は作りたくないけど作らないといけない!」ホルストンが徐々に力や情熱を失っていく過程が楽しめます。
最終回5話「批評」ネタバレ
1984年。ホルストンのコレクションのアフターパーティーには、スタッフのサッシーしかいません。新聞ではボロクソの批評が書かれ、ホルストンは気にしないと言いながらも落ち込みます。
そんな中、恋人のヴィクターが「大金を払わないと家で撮影した2人の性行為のビデオテープをリークする」と脅し、ホルストンは彼を殴って関係を終わらせました。
ゲイを暴露された記事が出回ります(結局あとでヴィクターに金を払います)。
ホルストンは午後6時に出社してほぼ仕事に手をつけない生活を続け、さらにHIV陽性の診断も下されました。
経営者のカールは耐えかねてサポートデザイナーとしてジョン・リッジを勝手に雇います。
さらにホルストンは1年に20日働けば大金を貰える契約書にサインをしてしまい、“ホルストン”というブランドの権利を全て奪われてしまいました。もう彼が何をデザインしても、一生ホルストンの名前を使えないのです。
1987年。ホルストンは著名な舞踏家マーサ・グレアムの舞台の衣装を担当することになり、ジョン・リッジを引き抜いて伸縮性の生地を用いた画期的なデザインを思いつきます。イラストレーターのジョーとも仲直りしました。
舞台は大評判で、特にホルストンの前衛的な衣装は各新聞でベタ褒めされました。ホルストンは「批評は関係ない」と言いながら涙を浮かべました。
ホルストンはサンフランシスコのウエストコートに移住して、毎日ドライブして海を眺める療養生活をし、1990年に死亡しました。
『HALSTON/ホルストン』最終回終わり!
最終5話の感想・評価
ヴィクターは1993年にHIV合併症で死亡。エルサは2021年に死亡。ライザ・ミネリはまだ生きている史実に基づいた感じで終わります。
ホルストンが海の青色を見て「いつもあの青をどうデザインに反映するか考えていたが、今はただ楽しむことができる」と言っていたのが印象的で、個人的にはこのドラマで一番心に刺さったセリフでした。
ピカソが晩年になって言った「やっと子供のような絵が描けるようになった」と通底するものがありますね。
また「批評は関係ない」と言ってるわりに絶賛レビューに喜んでいる感じは、映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』にちょっと似てるなと思いました。
海の青の感動をそのまま捉えることと、批評に喜ぶ姿を合わせて捉えると、暴力的な父親に怯えていた幼少時代からの自己肯定の旅を晩年にやっと終えたイメージですね。
普通の人は持っている“ミッシングピース”をファッションでの成功で埋めることはできず、何かを失うことでその欠けた部分まで自分で受け止めたような、詩的な終わりでした。
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