清水崇監督の映画『犬鳴村(いぬなきむら)』をU-NEXTで観てみた。英題はHOWLING VILLAGE。演出も凄かったし、怖い。普通に怖い。
もともとホラーが苦手で、Jホラーに関しては中学生で『リング』を観てからトラウマになっていて、あまり観ることができない。久しぶりに見てみたけど、やっぱりJホラーは怖いです…。
ストーリーが結構複雑だったので、この犬鳴村という映画が伝えたい本質は何なのかにポイントを絞って徹底考察してみた。
完全あらすじネタバレです。
- 映画犬鳴村の登場人物相関図
- 犬鳴村のラストネタバレ考察/美徳が祟りに変わる!
- 幽霊と犬鳴村タイムスリップの関係
- 犬鳴村人たちが犬に祟られる二重構造/祟りのループ
- 犬鳴村の血族と森田家の血が混ざった奏の今後
- お祭り騒ぎもある犬鳴村、でもCGがイマイチ
- 映画犬鳴村の結論
映画犬鳴村の登場人物相関図
考察・解説を詳しくする前に、まずは登場キャストの顔と名前を一致させてほしい。
引用元:https://www.inunaki-movie.jp/
森田葵/三吉彩花
本作の主人公。ある秘密を持つ森田家の長女で、わりと冷静な性格。看護婦として病院に勤めていると幽霊を目撃。
その後、兄・悠真と弟・康太が犬鳴村付近で行方不明になり、謎の男性・成宮と出会う。
明菜/大谷凛花
葵の兄・悠真の彼女。犬鳴村で流行りの動画撮影をして、祟られて気が狂って大変なことに…。
成宮健司/古川毅
葵に近づき、犬鳴村の過去の悲劇を語り出す謎の青年。反則級の秘密の持ち主。
摩耶/宮野陽名
成宮と親しい女性。葵や森田家と関係があるようだ…。
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犬鳴村のラストネタバレ考察/美徳が祟りに変わる!
犬鳴村のラストを説明しよう。まず、主人公・奏(三吉彩花)が、謎の幽霊青年・健司に過去の犬鳴村に連れていかれる。そして囚われていた弟の康太を救い出し、犬女である摩耶から、彼女が産んだ赤子(自分たちの祖母)を救い出した!というもの。
この結末が何を意味しているかというと、怨念が“村の外に出た”ということ。恨みの輪廻がここで完成したのだ。
奏が今住んでいる地域に、幽霊が出没して水死体が上がるのも、奏が過去から犬鳴村の血筋である祖母を助け出してしまったからなのである。
そう考えると、感慨深く不思議な気持ちになる。
なぜ幽霊が、関係ない悠真の彼女・凛香や友だちを先に殺して、森田家の人々を殺さないのか?という疑問を抱いた人もいるかもしれない。
森田家の人間(特に奏や康太)を先に殺してしまった場合、摩耶の子ども(奏の祖母)は村の外に出られず、犬鳴の血が途絶えてしまうからだろう。
ではなぜこのタイミングで、幽霊青年・成宮健司が奏を村に誘導したのかというと、悠真と彼女が村に入ったせいで、復讐心を刺激されたのだ。
犬鳴村はどういう映画なのか結論を述べよう。
先祖を救う善の行いが、のちの祟りにつながる練度の高い作品なのだ。
ちなみにヤバい村シリーズ続編の『樹海村』(2021)や、カルト漫画を実写化した『ホムンクルス』(2021)でも、同じように“よく考えてみると救いのない結末”になっている。
幽霊と犬鳴村タイムスリップの関係
犬鳴村に入ったらいきなり過去になり、そこから赤子(奏の祖母)を助けるタイムスリップ展開は無理矢理じゃないか!?と思うかもしれない。
ただ、そこには幽霊の時間の概念が関係していると推測できる。
筆者が少し霊感のある人から聞いた話なんだけど(その人は霊能者から聞いたらしい)、幽霊には時間の概念がなくずっと同じ風景が見えているようなのだ。
つまり、犬鳴村の幽霊青年・成宮やその妻・摩耶(犬女)、死んだ村人の意識や姿は、村が壊滅した当時のまま。よって怨念に触れて彼ら(幽霊)の世界に足を踏み入れることは、タイムバックにつながるのだ。
その考え方がオカルト界でどれほど一般的かはわからない。ただ清水崇監督作品では代表作『呪怨』でのタイムループオチからもわかるように、作品の根幹にその概念があるのかもしれない。
犬鳴村人たちが犬に祟られる二重構造/祟りのループ
この映画で特徴的なのが、村をダム建設のために全滅させた森田家曽祖父を恨んでいる犬鳴村の村人自身も、犬に祟られているという点。
村の血を継いでる奏の母・綾乃(高島礼子)や、村人たちはなぜ犬の化け物になるのかと考えたとき、犬に祟られているからと考えるのが自然だろう。
犬を屠殺して食っていたのだから、ワンちゃんに恨まれても仕方ない。
森田家を祟る村人たちが、犬に祟られているという2重構造が面白い。まさに祟りのループ!
映画犬鳴村は、犬の恨みと、村人の恨みがミックスされた映画なのだ。
犬鳴村の血族と森田家の血が混ざった奏の今後
主人公・奏は、犬鳴村の生き残りの血を引いた母が、森田家の血筋の父と結婚して生まれた子どもである。
犬鳴村の怨霊からすれば、唯一の子孫であり恨みの対象という非常に“ややこしい存在”なのが面白い。
恐らく奏の親である晃(高嶋政仲)と綾乃(高島礼子)の結婚したとき、恨み相手の森田家の血が混じったことに対して、犬鳴村の幽霊たちは激おこ。復讐を決意したのだろう。
奏の父と母が結婚しなければ、幽霊騒ぎは怒らなかったはずだ(父・晃がそうほのめかしているシーンが冒頭にある)。
では奏の役割は何なのか?
過去の犬鳴村から自分の祖母を救い出し、恨みのパワーを外に出すとともに、自分も犬の化け物になって地域の人々を襲うのではないだろうか。
これが彼女の未来だろう。かわいそうだ…。
お祭り騒ぎもある犬鳴村、でもCGがイマイチ
Jホラーは特定の霊に追いかけられるパターンが多い気がするが、犬鳴村ではウォーキング・デッドみたいに、たくさんの幽霊がゾンビのように襲ってくるのが面白い。
なんか幽霊の怨念祭り!みたいで、新しい描き方だと感心した。
ただ幽霊のCGがイマイチだった。B級感が漂っていて、たくさんの幽霊たちが人を襲うシーンがお祭り騒ぎみたいでちょっと笑えた。
映画犬鳴村の結論
最後に、犬鳴村がなぜ奥深いホラーになったのか、先に説明した答えをまとめて結論にしようと思う。
犬鳴村という映画は、
- 先祖を救う美徳が祟りに変わる
- 人間の祟りと犬の祟りが融合している
この2つの要素が斬新で、極めて挑戦的なJホラーだと言えるだろう。
先祖に対して善い行いをすることが、祟りに変化してしまう部分に、真に救いのない恐怖が潜んでいる。
ちなみに、清水崇監督による実在心霊スポットシリーズの『樹海村』が2021年2月に公開されたので、そちらの考察記事もぜひみてください。
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