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Smells Like Maniac 第5話 共鳴 其の4〜アン編〜

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 Smells Like Maniac 第5話 共鳴 其の4〜アン編〜

 

〜アン編〜

 

父カルロの子どもに言いつけるような口調が少し気に障った。この中に暗殺者がいることくらいはわかっている。ただ、異様な雰囲気をまとっている人物もいないし、死体も見てもいないので実感がわかないのだ。これ以降はリミットまで何も起こらないだろうと何となく感じていたし、みんなの会話にも参加したかった。

 

なぜ、自分は今こんなにも冷静でいられるのだろうか。きっといまだに、人の死というものを理解できていないのかもしれない。小さい頃、何でも褒めてくれる、もの静かな母が大好きだった。しかし、あとで考えるとそれは母が病気だったからかもしれない。いつ死ぬかわからず、娘といい思い出だけを残したかったのだろう。アンは10歳になる頃、母の病気が治る可能性は7割と言われていたが、半年後に呆気なく死んでしまった。涙は不思議と出なかった。死ぬ少し前まで元気そうに見えたし、死というものが理解できなかったのだ。

 

子ども心に、死というものを抑圧していたのかもしれない。死んだら会えなくなる。しかし、会えなくなることがどれほどの意味を持つのだろう。心の奥にいる母が消えることはない。母の心からもアンの笑顔が消えることはないだろう。たとえ肉体は存在しないとしても。そう考えることで心の均衡を図っていたような気がする。

 

不動産関係の会社を経営していて忙しく、いつも家を開けていたカルロは、母の死後はアンに干渉してくるようになり、そしてすぐに他の女性と結婚した。アンは、その女性とは姉と妹のような関係で、仲はとてもよかった。しかし、カルロがその女性と結婚してから家にちゃんと帰ってくるようになったことについては、かなり複雑な思いがあった。それから10年以上、しばらくは平和な家庭だったのかもしれない。アンが25歳を過ぎた頃、その女性も交通事故で死んでしまった。カルロはアンを胸に抱き続けた。顔は見えないが頭にポタポタと雨のように雫が落ちる。カルロはアンに泣いている姿を見せたくなかったのだろう。アンはこのとき父を支えなければと思いながらも、母が死んだとき、こんなに泣いていただろうかと一瞬考えてしまった。

 

ソフィアの死体を見てみよう、とアンは思い立った。なぜわざわざ死体を見ようと思ったのかはわからない。少なくとも好奇心などとは別の感情だった。何か足りないものが手に入る気がする。漠然とそんな感覚だけを頼りに行動していた。マスターキーを従業員金庫から取り出して階段を上がる。部屋に入るとカルロが座って居た。ソフィアを見つめながら涙を流している。アンは何も言わずにカルロを胸に抱きしめて泣いた。

 

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