ジョージ・クルーニーが監督・主演を務めたNetflixオリジナル映画『ミッドナイト・スカイ』は、個人的に近年稀に観る超傑作だった。
ストーリーの完成度・演技力・深いメッセージやテーマ・極上の映像美が全部そろっていて、とっても見応えがあった。
あらすじを紹介し、宗教的な側面などを徹底考察していく。なぜ酷評されているかも解説してみた。
キタコレ!まだ観てない人は、ネタバレを見る前に自分で鑑賞してから戻ってきてほしい。ちまたの評価は低いけど、僕は推したいです!SFよりヒューマンドラマ要素が好きな人向き!
- ミッドナイト・スカイネタバレ考察/人類の滅亡と新たな世界の始まりを描いた宗教映画
- ミッドナイト・スカイの極上の映像美
- ミッドナイト・スカイが酷評される理由
- 『ミッドナイト・スカイ』ストーリーあらすじネタバレ解説
- ミッドナイト・スカイ考察・解説・評価の結論まとめ
ミッドナイト・スカイネタバレ考察/人類の滅亡と新たな世界の始まりを描いた宗教映画
『ミッドナイト・スカイ』は、人類の滅亡と新たな世界の始まりを宇宙と北極の2つからダイナミックに描いた傑作だった。
タイトル『ミッドナイト・スカイ』の意味
ミッドナイト・スカイは直訳すると、“真夜中12時の夜”となる。(原作はリリー・ブルックス=ダルトン著の『世界の終わりの天文台(原題:Good Morning, Midnight)』。
深夜12時は日付が変わる時間だ。
つまり本作のタイトルには、人類の新しい日付の始まりという意味があるのだろう。
(↓原作小説はコチラ↓)
神を描いたとても宗教的なストーリー
本作には、キリスト教・仏教・ヒンドゥー教など、さまざまな宗教が語ってる終末信仰「いつか世界の終わりがくる」があり、惑星K-23が新たな地球となる物語だ。
とすれば、
- 惑星移住計画の発端となったオーガスティン博士は神
- ゴードンとアイリスはアダムとイヴ
と考えられるだろう。
テーマが明確に表現されていて、実に見応えがあった。ラストシーンも、レオナルド・ダ・ヴィンチ絵画「最後の晩餐」を想起させる。
聖書は正しかったという結論にもなる(神=人間になる点が問題かな?)。
ただ、旧約聖書を明確に否定している。
なぜ女の子なのか?旧約聖書の否定
乗組員のサンチェスとミッチェルが、「サリーのお腹の子どもは絶対に女の子だ」と語るシーンがある。女の子が生まれた方がゴードンと子孫を残せるので種の存続にとってはよいとリアルにも考えられるが、もう一つの側面がある。
アダムとイヴから生まれるカインの存在を否定しているのだ。
拡大解釈すれば、旧約聖書を否定していることになりとても興味深い。
そう考えると旧約聖書が唯一経典のユダヤ教徒が怒りそうな内容だニャ。
ラストの幻オチ深掘り/人類滅亡はオーガスティン博士のせい?
人類滅亡理由が明確に語られていないので推測になるが、人類の滅亡もオーガスティン博士の研究のせいではないだろうか?
オーガスティン博士は妻と娘アイリスと離れて生活したこと以外にも、何か後悔していることがあるような印象を受ける。(ジョージ・クルーニーの演技力により、哀愁がすご過ぎたせいもあるかもしれないが)。
だから、一人で北極の基地に残ったのではないだろうか。
そう考えると人類を滅亡させたのも救ったのもオーガスティンとなり、より彼が神に近いイメージになる。
ミッドナイト・スカイの極上の映像美
『ミッドナイト・スカイ』は映像も素晴らしかった。
まず、バーボー天文台基地でオーガスティンが過ごすスペースも、孤独な老人の末路という感じで入り込んでしまう。壮大な雪景色もすごい。
アイテル宇宙船の中も『2001年宇宙の旅』ばりに重力が縦横無尽で、優れたアイデアとデザインであふれている。船の中と外を長い間見ていても飽きない。(船外はジョージ・クルーニー出演の『ゼログラビティ』っぽいけど。)
船外での無重力作業では、逆さまになった状態で乗組員を映していて、これも斬新だった。
女性乗組員のマヤが死ぬシーンで、無重力でマスクの中に血の玉が浮いている映像や、真っ白な宇宙船の中で血の玉がパーっと広がるシーンが、不謹慎だが実に美しかった。新しい表現方法だと思う。
ミッドナイト・スカイが酷評される理由
巷では酷評されている『ミッドナイト・スカイ』。海外レビューサイトRottentomatoesでは、批評家の点数が51点。一般の視聴者の点数はなんと26点というかわいそうな点数だった(2021年1月現在)。
理由をまとめてみると「間延びしている」「既視感があるプロット(脚本)」というものが多かった。
既視感については、ジョージ・クルーニーが似たヴィジュアルの映画「ゼログラヴィティ」に出てたことが原因かもしれない。
間延びと聞いて世間の考えなんとなくわかった。これはもはや価値観の違いだろう。
つまり大多数の人は、ジョージ・クルーニーが北極の基地でダラダラ過ごしている描写にうんざりしたのだ。
しかし僕は、それらのシーンこそ主人公の人間を哀愁たっぷりに表現した見応えのあるものだという意見だ。彼がどんな人生を歩んできたか想いを馳せながら見れば、本作の面白さや評価が変わると思う。
映画の“間”は明らかにそれを楽しめという感じだったが、みんなそのようには見なかったのだろう。
良し悪しは言えないが、わかりやすいテンポ重視の映画が蔓延したことが原因かもしれない。
『ミッドナイト・スカイ』ストーリーあらすじネタバレ解説
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絶望の北極圏
西暦2049年2月。
末期の病気に冒された老齢のオーガスティン・ロフトハウス博士(ジョージ・クルーニー)は北極圏のバーボー天文台基地に一人残り、職員たちを全員避難させる。
人類が住める惑星探査宇宙船に交信を試みるが、K-23を探査したアイテルという船しか活動していないようだ。
そんな中、基地の中でヘリで逃げ遅れた小さな女の子を見つける。名前はアイリスといった。
外では鳥たちが呻きながら死んでいる。
アイテルに交信を試みるが、バーボー天文台のアンテナが故障しているようだ。オーガスティンはアイリスを連れ、スノーモービルに乗り込み何百キロも離れたヘイゼン湖基地へ向かう。
途中、基地から脱出したヘリが墜落していて、中で重傷をおった男性がオーガスティンに何かを耳打ちする。苦しむ男性に銃でとどめを刺した。
氷が割れてスノーモービルが沈む。ホワイトアウト(猛吹雪)の中、狼に襲われそうになりアイリスとはぐれるが、嵐が収まりなんとか再会。
宇宙船アイテル
K-23に人類が住めることを調査し終えたアイテルは地球へ帰還しようとしていた。しかし、交信がどこにも繋がらない。
乗組員サリー(フェリシティ・ジョーンズ)は、恋人で船長のゴードン(デヴィッド・オイェロウォ)との間の子どもを妊娠していた。女性乗組員マヤ(ティファニー・ブーン)が検査をするが、サリーは男の子か女の子かどっちか聞こうとしない。
船内に警報が鳴り、地球への軌道を大きくそれ、別ルートを辿らざるを得なくなった。
交信とトラブル
オーガスティンはヘイゼン湖基地に辿り着く。
アイテルのサリーは交信に成功するが、いくつもの岩の塊が船にぶつかりアンテナが破損。
マヤ、ゴードンと一緒に外に出て通信システムを直すが、再び流星群にぶつかり、破片が貫通したマヤは死亡してしまう。
地球とアイテルの運命
オーガスティンはサリーと通信し、地球が汚染して着陸できないと伝え、K-23に戻れと提案。
乗組員のミッチェル大佐(カイル・チャンドラー)は、妻と子どもを探す約束を果たすため小型ポッドで地球に戻ると言った。自身の幼い頃に死んだ娘をマヤに投影していたサンチェス(デミアン・ビチル)は、彼女の遺体を地球に連れて帰ると、ミッチェルと行動を共にすることにした。
サリーは本名はアイリスだと博士に名乗り、K-23がオレンジ色に包まれた素晴らしい惑星だと、その景色を語り始める。
オーガスティンは、サリーが自分が惑星探査計画を発案したときに離れ離れになった実の娘だと気づいて涙を流した。
オーガスティンは、K-23の光景を思い浮かべながら外の景色を眺めた。手を繋いでいたはずのアイリスがいない(女の子は幻だった)。
宇宙船アイテルはK-23に向かう。
ミッドナイト・スカイ END
ミッドナイト・スカイ考察・解説・評価の結論まとめ
ジョージ・クルーニーが監督・主演を務めた『ミッドナイト・スカイ』は、稀にみる超傑作となった。映像美・テーマ性・演技力の三位一体の名作。点数は96点。
近年のSF作品としてはエイミー・アダムス主演の映画『メッセージ』と同じくらい最高。
こんな素晴らしい作品を世に送り出したNetflix。動画配信フォーマットとしてだけじゃなく、映画制作会社としても格段に成長している。
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