トム・ホランド主演のNetflixオリジナル映画『悪魔はいつもそこに』はかなりの胸糞映画だった。
完成度としては低くなく、殺人連鎖モノとして楽しめるものの『ミスト』のような後味の悪さが残った。
なぜ胸糞気分だけが残ってしまったのか徹底考察して、評価やぶっちゃけ感想を解説してみた。
『ミスト』に匹敵する胸糞映画。宗教+暴力描写+ナレーションで似た構成のスコセッシ映画とも全く違うメッセージ!
- 『悪魔はいつもそこに』あらすじ完全ネタバレ解説
- 映画『悪魔はいつもそこに』内容まとめ・ラスト結末考察
- 悪魔はいつもそこに/感想と酷評:信仰心をあざ笑った胸糞作品
- ナレーションいらねえ!スコセッシ映画と似て非なる
- キャストが本当に豪華で演技は楽しめる『悪魔はいつもそこに』
- 映画『悪魔はいつもそこに』結論・評価・感想まとめ
『悪魔はいつもそこに』あらすじ完全ネタバレ解説
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第二次世界大戦で心に傷を負ったウィラード(ビル・スカルスガルド)。帰国して結婚して子どもも産まれ、ボロ屋で幸せに暮らしていたが、妻・シャーロットが癌で死亡し、それを苦に自身も自殺。
数年後・息子のアーヴィン(トム・ホランド)は、オハイオ州ノッケンスティフにある祖母の家で暮らしていた。母の病気を治すため、神に捧げる生贄として父が飼い犬を殺したことで、トラウマを持ち、信仰心をなくしている。
ほどなくして、義妹・レノラ(エリザ・スカンレン)が悪徳神父・プレストン(ロバート・パティンソン)に言いくるめられて犯されて妊娠し、自殺。アーヴィンはプレストンを射殺して逃亡する。
カール(昔ウィラードとシャーロットが出会った店にいた人物)は、妻・サンディと他の男性を性交させて写真を撮って殺す連続殺人鬼だ。彼らは道端に立つアーヴィンを偶然見つけて車で拾い、湖畔へ連れて行く。
アーヴィンは危機を感じ取り二人を射殺。
サンディの兄で、人殺し悪徳ボーデッカー保安官(セバスチャン・スタン)はアーヴィンを彼が昔住んでいた家付近の林で見つけて追うが、逆に射殺されてしまう。
アーヴィンがヒッチハイクで移動中、ラジオからベトナムの兵士を増やすという演説が流れる。アーヴィンは父・ウィラードのように戦争にいくかもしれないし、家庭を持つかもしれないと考えながらウトウトしていた。
映画『悪魔はいつもそこに』END!映画『悪魔はいつもそこに』内容まとめ・ラスト結末考察
『悪魔はいつもそこに』はどんな映画だったか。
アーヴィンが人を殺して逃げるラスト結末を含めて考えると、
- 父ウィラードの戦争体験からの負の連鎖
- さまざまに関連しあう悪の群像劇
という映画だ。アーヴィンにも幸せな未来はやってこないだろう。
戦争は故国の人々にも最悪な影響を及ぼす。
とまとめられる。
それを踏まえて、次は本作のぶっちゃけ感想を語っていく!
悪魔はいつもそこに/感想と酷評:信仰心をあざ笑った胸糞作品
胸糞ポイント!信仰心をあざ笑っている
熱心なキリスト信者たちが狂って狂気に走ったり、死んだり殺されたりのストーリーが大半で救いもない。
そのため信仰心をあざ笑っている印象を受け、この点がかなり胸糞。
特に、神父に妊娠させられて、直前で自殺を思いとどまろうと思ったがバケツが倒れて首吊りしてしまったアーヴィンの妹・レノラなど、かわいそすぎる…。
信仰や宗教を皮肉る作品は多いが、信じている罪のない人々への救いが全くないのが『悪魔はいつもそこに』の特徴だろう。
信仰は悪に勝てないと表現されているようでもある。
宗教だけではなく、夢や希望など何かを信じる人々に現実を突きつけるだけの、冷たさやつまらなさを感じてしまうのだ。
酷評:何が言いたい?メッセージが単純すぎ
『悪魔はいつもそこに』は、個人的に75点くらい。
悪の連鎖はうまく描かれているものの、それ以上の深いテーマが感じられなかった。
先ほどまとめた通り、戦争や地域の悪が関連しあっていて、信仰心をあざ笑っていると踏まえると、やっぱり悪は連鎖するという主題なのだろう。
ただそれはドキュメンタリーで伝えるようなメッセージで、物語にすると
「悪は悪を生むよね」というのは、ストーリー的には意外性がなくて物足りない。(救いが描かれていないので、全く意外だと感じない)
日本ホラー映画『犬鳴村』みたいに、善行だったことが悪につながるや、スコセッシ監督の『タクシードライバー』みたいに暴力が意外な結末を生むなど、そういったひねりがないからだ。
次は、スコセッシ作品と比較してみる!
ナレーションいらねえ!スコセッシ映画と似て非なる
ナレーションの是非
『悪魔はいつもそこに』では、なんと原作小説の著者ドナルド・レイ・ポロックがナレーターを務めている。
暴力シーン+ナレーションというのは『グッド・フェローズ』『カジノ』や『アイリッシュマン』で知られるマーティン・スコセッシ監督作品に近い構造だ。
ただ本作のナレーションは、スコセッシ作品のように登場人物の独白(モノローグ)ではなく、第三者視点になっている違いがある。
しかし「これがヘレンをみた最後だった」など言わなくてもあとでわかることが多く、スコセッシ作の独白ほどセンスは感じられなかった。
『沈黙 サイレンス』と比較
※『沈黙 サイレンス』のネタバレを少し含みます。
スコセッシ作の中で本作とテーマ的に近いのが『沈黙 サイレンス』だろう。
主人公周りで悲惨な出来事が続き、信仰心が問われるストーリーだからだ。
ただ全体的なメッセージは真逆で、『沈黙 サイレンス』が何か抽象的な救いを浮かび上がらせる奥深いものであるのに対し、『悪魔はいつもそこに』は悪が信仰心を負の輪廻の中に飲み込む感じの結末だ。
人間の美徳を肯定するか否定するかのはっきりとした違いがあり、個人的には『沈黙 サイレンス』の方が物語としての意義が大きいと思う。
キャストが本当に豪華で演技は楽しめる『悪魔はいつもそこに』
『悪魔はいつもそこに』はオールスター映画の一面もあり、個々の演技はかなり見応えがある。そういう目線では楽しめるだろう。
主人公アーヴィンは『スパイダーマン』シリーズのトム・ホランド。
父・ウィラード役はホラー『IT/イット』のペニーワイズ役で有名なビル・スカルスガルド。
胸糞神父役は、『トワイライト』シリーズやノーラン監督の『TENET』で有名なロバート・パティンソン。
悪徳保安官のボーデッカー役は、映画『キャプテン・アメリカ』や『アベンジャーズ』『ファルコン&ウィンターソルジャー』で知られるセバスチャン・スタン。
信仰心で狂って妻を殺す男性役は 『クイーンズ・ギャンビット』のハリー・メリング。
いずれも、個性が大きく違う名優ばかりで、演技のぶつかり合いが素晴らしい。
感染パンデミック映画『コンテイジョン』並みのオールスターだ(楽しめるかというとイマイチな点も似てる…)。
映画『悪魔はいつもそこに』結論・評価・感想まとめ
この映画をまとめると。
- 信じる人をあざ笑う胸糞展開
- 負の連鎖の描き方は上手い
- 悪の連鎖だけで物語として薄い
- 超豪華キャストで演技は楽しめる
となる。
個人的には、予想を超えたメッセージがあれば、全然評価の違う作品になっていたと思う。もったいないぜ!!!
『悪魔はいつもそこに』海外レビューサイトと個人の評価
- Rotten Tomatoes 批評家64% 一般の支持79%
- IMDb 星7.1/10
- 当サイトCineMag管理人の評価 75点/100
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